さいごのぼうけん

遊んだゲームの記録。ネタバレ注意です。

To the Moon


舞台は近未来。死に向かう者の記憶を書き換えることで、思い残した願いを叶えてあげるアドベンチャーゲームです。

 

人の記憶にアクセスして過去へと遡りながら願いの根源を探り、依頼主の記憶を改変することで最後の願いを叶える…それを職業とするジークムント社のエージェント、エヴァとニール。彼らを操作しながら依頼主の人生を追体験し、隠された謎を紐解いていきます。

 

今回の依頼者、ジョニーの最後の願いは月に行くこと。
しかし、ジョニー自身もどうしてその願いを抱くようになったのかわかっていません。

 

その願いには、どうやら彼の妻リヴァーの存在が深く関わっているようであるとわかってきます。

 

ジョニーとリヴァーはお互いをお互いの形で愛していたと思うのですが…ジョニーの幼少期に起こった不幸な出来事や、リヴァーの障害ゆえの特性ですれ違ってしまったようです。

 

エヴァとニールの軽妙なやりとりを気に入っていました。

 

乗馬パートもちょっと好きでした。笑

 

願いを送信しても叶えられない状況に陥り、なんとかきっかけを起こそうと奔走するふたり。
なんだかんだでいいコンビですよね。

 

おそらく幸せを感じていたであろうふたりの記憶もあり、すれ違いを生みそうだなという瞬間もあり。
過去の決定的な不幸な出来事(ジョンの双子の兄弟の事故死、そしてジョンの記憶が混濁するように仕向けられたこと)が大きな影響を及ぼしているにせよ…人生というのは数々の出来事の積み重ねであり、至るべくして至った結果が今なのかな…と考えさせられたりもしました。

ジョンが記憶を無くしていなければ、リヴァーとももっと理解し合うことができて、お互いの「幸せ」を追求していくことができた……のかな?

難しい問題です。どこかひとつの出来事を変えたり、何らかのきっかけを与えようと働きかけたりしたとしても…思うように未来を変えることは難しいのかも。

そんなことはエヴァとニールのほうがよく知っているのでしょうけれど。
彼らは臨終間際の患者の記憶を書き換えて願いを叶えるという仕事を選び、そして続けてきた人たちですから。
人間が死にゆく者に対してできることとしてそれが最善であると信じて、ずっと手を尽くしてきた人たちなのでしょうから。

 

蓋をさせられたジョニーの過去。

 

幼少期にジョニーとリヴァーは出会っていて、次の年も会う約束をしていた。忘れたり迷子になったりするかもと心配するリヴァーに、ジョニーは月で会おうと告げていた。
薬の投与のため記憶のつながりが曖昧になったジョニーにははっきりと思い出せないけれど、この思い出がどこかに残っていて、だから月に行きたいという最後の願いを抱いた。
記憶を混濁させられていたから、この記憶にアクセスできるようになるまで「月に行きたい」という願いを送信してもうまく実現させることができなかった…。

エヴァも言っていたように、こんなに美しい思い出が二度と思い出されなかったなんて、ただただ悲しい…。

ジョニーの双子の兄弟であるジョーイは、母親の車に轢かれて亡くなっています。そして母親は精神を病み、おそらく母親によってジョニーは薬を投与されて記憶を曖昧にさせられ、ジョーイとして扱われてきた、ようです。かつてのジョニーはジョーイの方が母親に愛されていると感じていたようですね。
ジョーイが亡くなって、ジョニーからはジョーイの記憶は隠されてしまったのでしょうけれど…母親からはジョーイと呼ばれ(祖父の名前で愛称のようなものだとジョニーは思っている)、見てきた範囲だけでも本や食べ物の好みが変わってしまっている(ジョーイの好みになっている、ジョニー本人はかつては好きではなかったものを好むようになっている)のがわかり…すべてが悲しい…。

ジョニーは「人と同じは嫌だ、埋もれるのが嫌だ」という考えを持っていて、自分のジョンというありふれた名前を嫌っています。ただそれだけじゃなくて、ジョーイと一緒に扱われるのが嫌、ジョーイのほうが愛されているのがつらいという背景が本当はあったのかな。そのことはもう思い出せないことかもしれないけど、ずっと引っかかっているのだろうか。
それで、「人と同じは嫌」だから「人と違う」リヴァーにハイスクールで出会い惹かれた、ということになっています。ジョニーの中では。

ジョニーとしては記憶が曖昧になっていることも自分ではわからないのかなと思うので、リヴァーからするとジョニーがただ約束を忘れてしまったように見えたのだろうな…というのもまた悲劇的なところです。

それでもリヴァーは、このときのカモノハシのぬいぐるみをずっとそばにおいていたのですね。

 

エヴァはジョニーの記憶からリヴァーを移動させ、ジョニーを月に行かせるべく新たな記憶を再生成しようとします。

 

リヴァーとジョニーの記憶を信じて、エヴァNASAでふたりが出会うように目論んだのでした。

 

仮タイトルだった「リヴァーのために」が「To the Moon」に変わっているのは…良いことなのかな…?
リヴァーが、ジョニーの記憶の中のリヴァーが満足しているからいいのかな…。

 

ジョーイが亡くなることなく、ジョニーとリヴァーが月に行くことができた世界。
エヴァたちに打てた手としては最善、あるいはいくつかある最善のうちのひとつなのかなとは思います。

ただ手放しで喜べないのは、これまでのジョニーの記憶が全て上書きされてしまったことに納得できていないから…かな。拙かったとしても、ジョニーとリヴァーの関係や暮らしはかけがえのないものだったはずだし。
そもそも「記憶を書き換えて願いを叶える」がジークムント社の使命で、ジョニーはそれをわかったうえで依頼し念願を叶えてもらったことになるから、外野がとやかく言うことではないんですけどね〜。まあでも色々考えさせられちゃうよな〜。

 

ああでもそうだね。ふたりの願いが叶ったんだね。

 

最後、死の近づく赤い演出と、鎮痛剤を飲むニール。
続編があるのかな。

 

ニールの軽口が聞きたくて、別行動パートはニールを選択していました。

 

突如始まった戦闘パート、ニールの体力が最初から少し減っているので疲れているのかな〜と思っていたんですが、これも鎮痛剤服用に関する何かだったのかな…?